矢車SITE ― 改訂2022年11月

写真を主とした本人の日記代わりのようなブログで、つぶやきのようなものですが、 当人の別ブログ記事の更新紹介も行っています。

いったん別のサイトに移転した本ブログのメイン記事を本サイトに戻しました。部分的にTwitter投稿を一定期間を区切って掲載したものが含まれます。

日本人とキリスト教 ― 井上章一著。なかなか良かった。

一月ほど前くらいだったか、角川ソフィア文庫という文庫本の新刊でこの本を書店の平積みで見つけてすぐに購入した。原書は2001年5月の刊行だそうで、カバーの表紙絵は見たことがあるような気がする。今回の文庫本は10月25日発行で、平積みで見つけた時は一冊だけが残っていた。結構速く売れているような印象。先日別の書店に行ったら、また沢山積んであった。厚さも200ページくらいと手ごろだし、何しろ読みやすく退屈しない文章を書く人の本だから、仕事があるときにでも合間に読むにはちょうど良い本なのである。とはいっても端正で美しい文章とは言えず、癖があってそれは好きではないが、言葉とはそんなもので、内容があって読みやすいのだから満足すべきか。

その内容だが、二、三冊だけだが読んだことのあるこの著者の他の本に比べても、優れたものになっているように思う。もちろん気に入らないところや、部分的にどっちつかず、中途半端、非徹底、妥協的、といった不満点はあるが、最終的には一つの立派な結論に到達しているように思う。宗教と文化の広がりについての一つの見方である。そのあたりを最終章から二、三のフレーズを抜き出してみたい。

― 世界を一つの文明圏だとみなす観念が、かつてはあった。日本のみならず、ヨーロッパにおいても、である。今それがないとは、言わない。しかし、今日では、互いの文化を独立的に評価する史観が、大勢を占めている。

― あえて推量で書くが、ふるい歴史観は、民族主義の高揚によって圧倒されたような気もする。第一次世界大戦をさかいに、世界各地で民族自決論が、唱えられだした。

― 文化伝播論は、この趨勢になじみにくい。

最後の方は結論というよりも問題提起というべきかもしれないが、確かに留意すべき重要な問題提起だと思う。

ともかく分量も手ごろで読みやすく、内容もあり、人にも勧められる一冊だと思います。